PMFオーケストラ 大阪公演
平成16年(2004年)8月3日(火曜日)
ザ・シンフォニーホール
19:00開演
座席:1階 K列 9・10番
指揮: ワレリー・ゲルギエフ
演奏: PMFオーケストラ
今日のコンサートは、苦節(何が?・・・)○○年。 「この演奏が聴けるならチケットがいくら高くても払う。」と心に誓っていた、ショスタコービッチの交響曲第11番。
初めて聴いたのは、大学生の頃、ベルナルト・ハイティンクが指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウのCDでした。 その時の衝撃は今でも忘れません。 ロシア革命の引き金にもなった「血の日曜日」を描いたのがこの曲ですが、一般的には副題が付されていても、必ずしもそのイメージに符合しないものなのに、この曲は違いました。全楽章を通して、見たわけでもない、ロシアの民衆の怒り、冬宮前での惨劇と鎮魂、そしてそれをバネにするエネルギーがまざまざと目の前に浮かび上がってくるのです。 とくに冬宮前での民衆の殺戮場面については、その描写に身体中が総毛立つような感触を覚えました。
そして、CDを聴き返せば聴き返すほど、その演奏をライブで聴いてみたいという衝動は抑えがたいものになったものになっていきました。 しかし、日本ではショスタコービッチ自体、交響曲第5番を除いて演奏される機会が非常に少なく、CDで聴くだけでも超大編成を組まなければ不可能なように思うこの曲が演奏されることは絶望的な気もしていました。
このように思い入れの深かったと同時に「一生、ライブで聴けることはないだろう・・・」と諦めてもいたこの曲が2004年8月3日に演奏されたのです。 PMFだからこそ実現できた大編成で・・・
前置きは、これくらいにして・・・
演奏会は一曲目は、新進のニコライ・ズナイダーさんをソロに招いて、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調でした。 (普通、この曲だけでも十分にメインを張れますね) ズナイダーさんは長身の方で、ヴァイオリン(ストラディ・ヴァリウス)がとても小さく見えました。そして、その長い腕から振り出される力強いボーイングは、聴き応えと共に見応えのあるものでした。
そして、二曲目が、ショスタコービッチの交響曲第11番ト短調。 編成は、弦だけでも70〜80名近く、ハープも2台が並び、普通の演奏会では絶対に目にすることができない大規模な金管・木管群と様々な楽器と奏者を配置した打楽器群で構成されています。この編成を見ただけでも
Tarlin の心は感動に満たされていましたが、指揮棒が振り下ろされてからの感動は筆舌に尽くすことができません。
演奏は、若手ばかりで編成されているとはとても思えないほど素晴らしいものでした。特に素敵だと感じたのは、ティンパニの窪田さんとスネアドラムのJacob
Nisslyさんでした。
凛とした気迫に満ちた堂々としたティンパニの響きには本当に感動しました。 また、第二楽章でのペースメーカとなるスネアドラムは、歯切れがとても良く、鬼気迫る描写を見事に演奏していました。
第4楽章の荘厳な響きを経て演奏が終わった後、その激しい演奏に呆然としたからなのか、それとも、あまり聞き慣れない曲だからなのか、少し間をおいて、拍手が始まり、それはだんだんと大きな渦となっていきました。延々と拍手は15分ほども続いたでしょうか。
もう二度とライブで聴くこともないかもしれない、ショスタコービッチ 交響曲第11番 ト短調 「1905年」 本当に素敵な演奏会でした。
【余録】
実は、この2004年8月3日は、「淀川花火大会」の日でもありました。新福島駅からシンフォニーホールへと向かう道すがら、なんか、浴衣を着たお姉さんが多く、「もしや・・・花火」とかと思っていると、 シンフォニーホール内に次のように掲示されているではありませんか。
「本日、淀川花火大会につき・・・・・第二部で花火の音が聞こえることもありますがご了承願います。」
「ガーーーーン☆ ご了承できーーーん」 なんでこんな大事な演奏会に花火なぞ・・・ と思いました。 やんぬるかな、確かに第11番の演奏中、静かな場面で、かすかに「ドーン」という花火の音がホール内に聞こえてきます。 「うん? でも、なんか、これいいよ」 そうなのです、遠くで大砲の音が鳴っているようで妙に曲にマッチしたりしているのです。
思いがけないエキストラ効果のあった、想い出部会演奏会になりました。