京都には色々な桜の名所がありますが、私たちのお気に入りの一つが、蹴上のインクライン沿いに咲く桜です。

 左右から折り重なるように枝を張る大木のソメイヨシノで、インクラインはさながら桜のトンネルのようになります。

 琵琶湖疎水は人工物でありながら、京都という町にしっくりと融け込み京都らしい風情を醸し出していると思います。この琵琶湖疎水という偉業を成し遂げた明治の技術者に思いを馳せながらう桜の下を歩くのもいいものです。

 京都の桜は、どこか他にはない気品を感じるのは気のせいでしょうか。

 桜の中でもソメイヨシノの花は、京都の町によく似合います。華やかで、どこかはかなげな花の風情が、京の都の持つ陰影とよく調和し、互いに引き立てあうのです。京に数多くある桜処。場所によって、花の表情もまた違って見えます。
 
 ここ、蹴上のソメイヨシノは、トロッコレール跡の散歩道という少し牧歌的な場所柄でしょうか、京のソメイヨシノの中でも明るく、健やかに見えました。

 日本最古の水力発電所「蹴上発電所」です。水力発電と言えば黒部に代表されるように山深い渓谷に造られるダムが思い出されますが、京都市内の真ん中にあるとは意外ですね。

 そして、もう一つ驚きなのが現役で発電しているということです。出力4500kWという今となっては小さな電力ですが、今なお京都市内の誰かは、この発電所で作られた電気で生活していると思うと、とても、めんこいですね。建物は荘重な洋風建築で当時の心意気が偲ばれます。 

 Erill と Tarlin にとって、蹴上は特別な想い出のある場所でもあります。 それは、結婚式を挙げたホテル 「ウェスティン都ホテル」がそこにあるからです。インクラインからはホテルが一重二重と連なる桜越しに臨むことが出来ます。

 蹴上は、きら星の如く名所のある京都では地味なところですが、東山の懐にいだかれ、南禅寺・哲学の道へと通じ、またひと味違った京都の香りを味わいながら散歩すると素敵なところです。