Lofoten

 北極圏内の北緯67度から69度までの間に横たわるロフォーテン諸島。スタルハイムで出会った日本人の旅行者に、ぜひにと薦められ、8月末、勤めを終えたErillは、オスロからドンボース、ドンボースからトロンヘイム、トロンヘイムから夜行列車で北極圏内のボードーへと列車を乗り継ぐこと18時間、翌朝9時にボードーに着き、港でフェリーへと乗り継ぎ、ロフォーテンの中心地スヴォルヴァルへと上陸しました。
 
 最果てという言葉は、この島のためにあるのでしょうか。そこには、極北の厳しい風光に研ぎ澄まされた、美しくも荒涼たる自然が、寂寥感をたたえて拡がっていました。真の孤高の持つ峻厳さが、身を切るように迫ってくる風景でした。

最果てのフィヨルド

 スヴォルヴァルからバスに乗り、ロフォーテン諸島の南端近く、レイネ(Reine)に向けて南下します。

 島全体がフィヨルドと言われるロフォーテン。南半分の海岸沿いを走ると、その複雑な地形の妙を実感出来ます。水面から直に屹立する山々、その間に入り組んだ海。その水は、冴え冴えと澄み、明るい碧と冷たく切るような蒼の、厳しくも鮮やかなコントラストをたたえています。

 北の海が見せる水の色の極致ともいえる美しさです。
 

レイネの村/Reine

 ロフォーテン諸島の南端近くに、レイネの村があります。赤い家並みが、山肌の緑と海の蒼によく映えます。

 ニシン漁で生計を立てている村で、あちこちにニシンが干してありました。Erillが泊まったユースホステルも、そうした漁師の民家をそのまま利用した感じの建物でした。風景を彩る舟屋の姿は、自然と共にあるこの村の人々の営みの、密やかな力強さを、象徴しているかのようです。

 
最北の厳しい自然の中で、ひっそりと息づく村の佇まいと人々の姿に、厳かな感動を覚えたその夜、8月末のロフォーテンの空には、オーロラが大きく揺らめいていました。その色彩は、空が完全に暗くなる真冬に見せる明るい緑でなく、白い、怪しい光でした。

北へ延びる道

レイネを出て、今度は北端のアンデネス(Andenes)に向かいます。そこは、地理的にはもうロフォーテン諸島ではありません。南側のロフォーテンと比べると地形がなだらかで、その分荒涼感が増します。

 トールキンの「ホビットの冒険」の終盤、たての湖からはなれ山までの風景は、何となくこんな感じだったのだろうかと、バスの中でぼんやりと思いながら眺めていました。と言っても、目の前に見えているのは湖ではなく海なのですが。

トロルフィヨルド

 ソートランド(Sortland)からスタムスンド(Stamsund)まで沿岸急行(Hurtigruten)に乗船しました.。途中、船は、北極圏沿岸随一の美しさと言われるトロルフィヨルドを通過します。ここを見るために、そして沿岸急行の雰囲気を味わうために、貧乏旅行にふさわしく、キャビンを取らなくてもすむ昼間航路に乗船しました。
 
 沿岸急行は、片道一週間をかけて、ノルウェー沿岸を南はベルゲンから北のヒルケネスまで往来するクルーズ船です。のんびりと船旅を楽しむ上品な年配の人々が多く乗っている一方、航路沿いの地元の人々の日常の足ともなっているようで、Erillが乗った時も、地元の人が何人か乗り込み、次のスヴォルヴァルで降りていました。

 トロルフィヨルドは、二つの島が両側に迫る、非常に狭い天然の水路の最奥にあります。写真は、その岩壁の屹立する水路を徐行している所です。こうして、辿り着いたトロルフィヨルドは、蒼く透明な海から屏風のような雪山がそそり立つ、絵に描いたような明媚さでした。(一番綺麗な所の写真は、手ぶれや強すぎる逆光で今一つでしたので、掲載を諦めました。)