Sognefjord

 

ヒョース滝/Kjossfossen

 フロム鉄道
(Flaamsbana)は、標高866mのミュルダールから、ソグネフィヨルドの船着き場のあるフロムまで、標高差863.6m、走行距離 20.2kmを約一時間かかって進む、スイッチバック方式の登山鉄道です。ギーギーと線路を軋ませながら、途中20ものトンネルをくぐり、目のくらみそうな峡谷や、岩壁を流れ落ちる滝をいくつも通り過ぎます。

 途中、列車は、一段と水量の多い滝の見える駅で、停車します。長さ93mのヒョース滝です。辺り一帯にごうごうと轟きを響かせながら、もうもうと水しぶきを上げ、大迫力で流れ落ていちます。その水量のすさまじさは、列車の降り口まで水しぶきが飛んできて、濡れてしまうほどです。
 
 夏の盛期には、滝の上に民族衣装を着た女性が立ち、ソプラノの歌声を響かせます。Erillも、一度だけその歌声を聴くことが出来ました。

ウンドレダール/Undredal

 ロムからフィヨルドを渡るクルーズ船は、まずソグネフィヨルドの枝分かれしたアウアラン・フィヨルドを進みます。海であることが信じられない穏やかな水面です。

 しばらく行くと、左岸にウンドレダールの村が見えてきます。写真中央に見える、愛らしい白い教会は、1147年建造の、北欧で最も小さな木造教会です。当初は、ノルウェー独特のスターヴ式の建物でしたが、1722年抜本的に改築され、現在の姿になりました。内部には、中世当時の絵画が残っています。

 私が滞在したスタルハイムは、ソグネフィヨルドの、ナーロイ・フィヨルドから続くナーロイ峡谷を登りつめた所にあります。

 1998年の夏は、天候不順にみまわれ、連日の曇り空とにわか雨、気温は日中でも10〜13度までしか上がらず、地元の人が「緑の冬」と呼びならわす冷夏の年でした。それでも、週に1〜2日は巡ってくるお天気のいい休日を選んで、バスでヴォスまで出、フロム鉄道とクルーズ船を乗り継ぎ、ソグネフィヨルドを何度か見て回ることが出来ました。

 ノルウェーのフィヨルドには、それぞれの表情があります。岩肌も白くどこか南のフィヨルドという雰囲気のリーセ、田園の風情のどかなハルダンゲル、北欧神話の神々が今も宙を漂っているような神秘的なガイランゲル。

 それぞれのフィヨルドを訪ねた中で、私にとってのソグネフィヨルドは、水と緑に潤いながらも、露出した岩肌に氷河の爪痕をなまなましく顕す、大自然の荒々しくも猛々しき力が宿るフィヨルドです。ノルウェーの文学者ビョルンソンの言葉のようにガイランゲルが神の言葉を語るとするなら、ソグネは地球造成の力を物語っているようです。
 

バッカの村/Bakka

 船は、途中で左に大きく航路を変え、アウラン・フィヨルドから更に枝分かれしたナーロイ・フィヨルドへと入ります。

 カモメ達の飛ぶ中、左右に流れ落ちる滝をいくつか過ぎると、右手にバッカの村が見えてきます。人口20人の小さな小さな村です。昔は、こうした村の交通手段は、フィヨルドを渡る舟でした。

 バッカを越えると、もうグドヴァンゲンです。人々はここで船を降り、バスに乗り換え、スタルハイムの峠を越えて、ヴォス、そしてベルゲンへと向かいます。

ヴァスビグド湖遠望/Vassbygdvatnet

 ソグネフィヨルドが分岐したアウラン・フィヨルドのほとりに、アウランという町があります。そこから、アウラン川を遡って谷を奥へと入って行くと、深く蒼い水をたたえたヴァスビグド湖が見えてきます。湖の畔には大きな水力発電所があります。
 
 道は、つづら折りの急な坂になり、湖を見下ろすように上っていきます。途中、展望台があり、眼下にヴァスビグド湖、屏風のように立ちはだかる岩山、その遙か向こうにアウラン・フィヨルドが覗く、奥行きのあるパノラマが展開します。

 ここからさらにアウラン谷を奥へと進むと、今は空き屋となった農場や、牧草地の中に忽然と現れる古い墓地があり、山間部の厳しい歴史を語っています。

 1999年の夏、休暇を取って旅行したとき、ホテルでお世話になったコーンウォール人のジョアンナさんとスコットランド人のノーマン夫妻が、車で案内してくれました。